Pages

2011/01/23

火車(宮部みゆき 著)読了

このエントリーをはてなブックマークに追加

父親のマイホーム購入による借金が原因で辛酸を舐めた女性が別人になるために、他の女性を殺害し戸籍を入手し、銀行員の男性と婚約まで漕ぎ着けた。幸せな未来が広がっていると思いきや、クレジットカードを作ろうとしたことから綻びが生じ、彼女の過去が暴かれていく。物語を乱暴に要約したら上記のようになった。

手軽に作ることができ、手軽にキャッシングや物品購入が出来るが、使い道を誤ると悲惨な末路が待っている。物語中に弁護士がクレジットカード作成数の推移を語るシーンがあるが、成程、便利なので驚異的な上昇傾向を示している。利用したことがある人ならカードの利便性を否定しないだろう。勿論俺も否定はしない。

併し、使い道を誤ると悲惨な末路が待っている。少額利用時には気にならない金利が、高額利用や長期間利用になるとずっしりと重くなってくる。そして気付いたら、多重債務者となり、高額金利に泣かされることになる。泣かされるだけなら良いが、状況を打破するために犯罪に手を染めたり、一家心中や、自殺に追い込まれたりと悲惨な話は事欠かない。

火車では主人公の女性は犯罪(殺人と、他人の戸籍を入手し悪用)へ手を染め、逃亡をすることになった。最後まで後味の悪いストーリであるが、サラ金や消費者金融問題を主として扱う弁護士を通じて、絶望的にならずに弁護士へ相談を、と宮部みゆきが語らせているのが唯一の救いだろう。

ミステリとしても、肩の凝らない経済小説としても読むことができる。クレジットカードを利用する際には努々安易に考えずに、この小説の主人公たちの末路を思い出すと無茶な利用はしなくなる効果も期待できるかもしれない(個人の想像力や資質に左右されるけど)。

ボリュームはあるがストーリーがしっかりしているので中ダレすることはない。肩は凝らないけど読み応えのあるミステリを欲している人に御勧めの一冊だろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿