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2011/09/05

儚い羊たちの祝宴(米澤穂信 著)読了

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裏表紙に書かれていた「暗黒ミステリ」という言葉に惹かれて思わず購入してしまった。恥ずかしながら米澤穂信という小説家は寡聞にして知らなかった。書評も読んだことがないし、全くの衝動買いだった。

大学の読書サークル「バベルの会」を共通のキーワードにした5本の短編小説集となっている。

「暗黒ミステリ」と銘打っているだけあってどの作品も救いようのない終り方をしている。救いようのない終り方をしているのだが、主人公の視線で書かれた一人称の文章が救いようのない印象を和らげているので、馳星周の作品を読んだ後に感じる虚脱感はない。

5本の小説はどれも怖いのだが、その中でも「山荘秘話」という別荘の管理人をしている女性を主人公にしたものと、表題にもなっている「儚い羊たちの祝宴」の2作品は特に怖かった。

「山荘秘話」は別荘の管理人屋島守子の視線と語り口で描かれてるが、丁寧な口調で別荘の管理人としての仕事の大切さや、ゲストをもてなすポイントを切々と訴える一方で、二人の人間を躊躇いもなく殺害してしまう、其の二面性が非常に恐ろしかった。

「儚い羊たちの祝宴」はバベルの会元会員で女子大生大寺鞠絵の手記という形で描かれている。大寺の父が厨娘という料理人を雇ったことに端を発し、「アミルスタン羊」の料理を厨娘にリクエストすることにより、バベルの会から自分を追い出した会長へ復讐をするという話だが、最後に出された料理を口にするかと思いきや、彼女の手記は其の一歩前で筆を折っている。この中途半端な終り方が不気味だったし、手記を残した彼女や彼女の家族がどうなったのか、と想像すると余計に不気味になった。

謎解きとしては短編小説ということもあって凝ってないし、一話のボリュームもそんなに無いので気軽に読むことができる。通勤途中や、出張などの移動時などの時間潰しにぴったりの一冊だと思う。衝動買いだったが外れではなかった、と思った一冊。

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