面接時に持参する履歴書の志望動機を書き直していたら、携帯電話の着信音が呼鳴した。携帯のディスプレイには元同僚の名前がブリンクしていた。
おお懐かしい名前だ!と思いながら通話ボタンを押した。挨拶、近況報告が終わり本題に入った。俺が在職中に開発したシステムのメンテナンスに関する話だった。既製のCPUボードと自社開発のボードを組み合わせたハードウェアに、組み込みソフトを組み合わせたものなのだが、既製のボードが既に販売打ち切りになったり、型番が変更になったりしてる。
既製ボードの型番変更は俺が在職中にも何度かあり、各ボードに合わせた組み込みソフトとデバイスドライバのインストール用バッチファイル等を作成していたが、どうやら管理状態が悪く其れ等が何処にあるのか、どのような設定をすれば良いのか、等を判る人間が居なくなり往生しているらしい。
俺が在籍中から引き継ぎに難のある組織だったからあり得ない話では無い。あり得ない話では無いことから既に問題があるが、一番の問題は退職して既に10年以上経った人間に安易に頼ろうとするその姿勢だ。まあ他人が開発したシステムのメンテは面倒だろうし、他の仕事もあるだろう。其れは其れで理解出来るが、俺は退職する前にきちんとドキュメントも残し、手順を他の人間にマンツーマンで教えた筈だ。と、元同僚に言ってから気付いた。手順を教えた人間もそういえば退職したのだった。何という事だ!此のシステムに携わった人間は悉く退職、若しくは転勤するというジンクスは未だに健在だったのだ。
有り難くないジンクスの御陰で、すっかりさっぱり縁を切ったはずのシステムの子守をする羽目になりそうだ。電話のあとに稟議を上げると元同僚が言っていたが、どうか稟議が通りませんように...。
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