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2011/10/23

私が彼を殺した(東野圭吾 著)読了

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小説家穂高誠の以前の恋人が、彼の結婚式前日に、彼の家で自殺をした。そして翌日、結婚式場で穂高誠が突然死した。

以前の恋人の自殺と穂高誠の死をめぐり、穂高誠の事務所に所属する駿河直之、穂高誠の担当編集者雪笹香織、穂高誠の婚約者の兄神林貴弘の3人の視線で物語は描かれている。

多くのミステリ小説は一人の視線で描かれているものが多いが、この小説は3人の視線で描かれている。3人には、各々の事情により誰が穂高誠を殺してもおかしくない。更にその内の二人、駿河と雪笹は「俺が穂高誠を殺してやったぞ」、「あたしが彼を殺したのだ」と宣っている。神林にしても最愛の妹(最愛の事情は気持ちの悪いものだが...。)を嫁に、ということで面白くない旨を吐露している。

最後の最後まで誰が犯人でもおかしくない。そして最後に練馬警察署の刑事加賀が「犯人はあなたです」と言って物語は終わっている。この結末には正直驚いた。結局、誰が犯人であるかを明言しない侭なのだ。確かに最後まで明言せずに、読者に判断を委ねるという手法もあるだろう。其れは其れでありだと思うが、個人的に納得が行かない。

そこでふと気になったのが目次にある「推理の手引(袋綴じ解説)西上心太」だ。ミステリ小説なので一寸凝ったことを、ということで解説を袋綴じにしたのだろうくらいにしか思っていなかったが、小説の結末を知ったら解説の意味合いが違ってくる。

袋綴じを切り離し解説を読んで漸く犯人を決定づけるポイントが分かった。嗚呼、成程と納得した。解説も含めて小説を楽しんだのははじめてだ。解説を読んで自分の推理が正しいかどうかが分かった。本格的なミステリを楽しみたい人には御薦めの一冊だと思うが、近親相姦が絡んでいるのでその手の話が苦手な人には御薦めしない。実を言うと近親相姦の話が出てきて、個人的には失敗したかなと軽く思ったのだ...。

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