家に積読状態で放置しているのに気づかず、危うく書店でもう1冊買いそうになった本が此れだ。
死刑囚の冤罪を晴らすべく、刑務官と仮出所中の青年が東奔西走するというストーリになっている。死刑執行までのタイムリミットに間に合うか、其れとも間に合わないか、とハラハラさせながら読ませるストーリテリングは秀逸だと思った。
途中中だれすることもなく最後まで一気に読めたが、最後の最後で刑務官宛に仮出所中だった青年が寄せた手紙で鼻白んでしまった。ストーリに厚みを持たせるための手法だとは理解できるが、織り込ませるならもう一寸早いタイミングで良かったのではないかと思った。最後の最後にあざといことをされたと感じて、読後の余韻が心地良いものでは無くなった。
最後のあざとさを除けばミステリとして純粋に楽しめる一冊だ。また、死刑囚が登場する為か、現行の死刑制度の矛盾や、裁判の判決のあり方にも一石を投じている。死刑制度廃止論者の人も、死刑制度肯定論者の人も頷ける部分があると思う。死刑制度や刑法学については簡単にしか言及していないが、刑務官の取った行動を補足する為には、もっと深く言及しても良かったかなと思った。然し簡単にしか言及していないからと言って、ストーリが陳腐だったりすることもなかったので此れは此れでバランスを考えると正解だったのかもしれないだろう。
年末年始の休暇、酒でも呑みながら読むには丁度良いボリュームの一冊だろう。
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